七星side

「七星〜!起きなさーい!」

ただいまの時刻、午前7時。
2階建て新築の2階に部屋がある私は、
1階にいるお母さんのやけに大きな声で目が覚めた。

「今日から椎名さんたちがお家に来るって言ったでしょ~!」

………っっは!そうだったんだ!
私はその言葉で一気に目が覚めた。


お母さんの言う椎名さんとは、お母さんの再婚相手。
お父さんとは私が3歳の頃に離婚している。
今まで私を女手1つで育ててくれた母には感謝してる。
だから、お母さんから再婚の知らせを聞いたとき、
わたしも心から嬉しかった。


ん?でも今お母さん、椎名さん『たち』って言ってたような…

まぁいいや!気にしない気にしない!


私は洋服を着替え、洗面も終えたところで
お母さんがいる1階へと向かった。


「今日椎名さん何時に来るの?」

お母さんが準備してくれたフレンチトーストを頬張りながら私は聞いた。

「予定では9時には来るって言ってたよ」

時計の針をみると、もう既に8時45分。

「え?もうすぐじゃん!掃除とか大丈夫なの?」

「お母さん楽しみで仕方なくて5時から準備してたんだ〜♪」

そう言ってコーヒーを飲むお母さんを見ると、私も嬉しくなった。

「お母さんほんとに椎名さんのこと好きだよね笑」

「あったりまえじゃない!七星もきっと気に入るはずよ」

そんなこんなで、他愛もない話を交わしていた私たちの所に、家のインターホンの音が聞こえてきた。

お母さんは上機嫌で玄関へと向かう。
私もお母さんの後ろを着いて行った。


ガチャッ…


「龍くんいらっしゃ〜い!」

さっきまでは『椎名さん』だったのに、『龍くん』になってるし…笑

「会いたかったよななちゃん〜」

と言って、お母さんに抱きついたのが、今日から私のお父さんとなる、椎名 龍平さん。

お母さんのことは、名前通り、『ななちゃん』と呼んでるみたい。

いやいや、めっちゃラブラブオーラ満開じゃん笑

するとその後ろから、
「初っ端から甘ったるすぎだろ」

と、ダルそうな声の男の子が顔を出した。

「えっ…」

私は目を疑った。今私の目の前にいるのは、紛れもなく、私の1つ下の元彼、

『椎名 一星』だったのだ。

あっちも私の顔を見て一瞬フリーズした。

私たち2人の様子を見ていたお母さんが

「あれ?七星と一星くん知り合いだったりする?」

「っううん!初めましてだよ!」

私は咄嗟に嘘をついてしまった。

「あ、そうなのね。じゃあ詳しい話はリビングで話しましょう?」

「そうだな。」

椎名さんも了解して、私たち4人はリビングへと向かった。


椎名さんの目線がお母さんから私へ移り、

「君が七星ちゃんかな?ななちゃんに似て可愛いなぁ~。」

「はっはい!佐野 七星って言います!あっ、今日からは、椎名ですけど…笑」

緊張してロボットみたいにカタコト。

「ははっ。そんなに緊張しなくて大丈夫だよ。今日からお父さんと呼んでくれたまえ!あ、龍くんでもいいよ?なんつって」

優しい人だなぁ~
お父さん(ここからはお父さん呼び)のおかげで、私の緊張もほぐれた。

「ほら、一星もちゃんと自己紹介して」

お父さんが促すと、

「椎名 一星、高校1年生です。お母さん、七星ちゃんよろしく今日からよろしくお願いします」

「お母さんだなんて!嬉しいわ。今日からここが一星くんの家だから自由に使ってね。」

お母さんは、とても気に入った様子。

そして私に、

「お母さん、龍くんと話したいことあるから、一星くんのお部屋に荷物一緒に運んであげて~」

と私にお願いをした。

(出来るだけ2人になりたくないのに…)

そう思いながら私たち2人は2階へと向かった。

「一星くんのお部屋、私の隣だから、何か困ったことがあったら言ってね。」

と、私は出来るだけ顔を見ないように言った。

いや、顔を見るのが怖かったのだ。

「じゃあ私部屋戻るからっ、」

一刻も早くこの空間を抜け出したい私はそう言って部屋へと入った。

「はぁ……この先大丈夫かな…」

そんなことを思い1人うなだれでいたら

コンコン

部屋をノックする音と同時に、

「聞きたいことあるから部屋入れてくんね?」

私の大好きかハスキーなボイスをした一星の声が聞こえてきた。

「あ、いいよ」

と、私は自分の部屋に一星を迎え入れた。

─────そのあとあんなことが起きるなんて知らずに…