それはもう・・・突然に




ピンポーン、ピンポ、ピン、ピン・・・




食事が終わったタイミングで
恐ろしくなり始めたチャイムの音に
二人の顔付きが変わった


キッチン脇のモニターには


・・・っ!


怒りの形相の亜樹さんが映っているのが見えた


「どうする?」


モニター前に立った透さんが
理樹さんを振り返った


「迷惑になるから通せ」


その一言でモニターに付く
ボタンを何箇所が押すと

モニターから亜樹さんが消えた

酷く怒ってる様子の亜樹さん
あの倉庫での記憶は
優しい顔しか思い出せなくて

急に不安になる

それに気づいた理樹さんは
サッと手を引くと
ソファの隣に座って肩を抱いた


「大丈夫だ」


理樹さんの声も今は落ち着けなくて

不安な気持ちのまま理樹さんを見上げると
今度は少し違う音のチャイムが鳴った


「はいは〜い」


透さんが緩い声を出しながら
リビングのドアを出て行った

直後に

ドシドシ凄い足音と共に


「琴!」


唸るような重低音がやって来た


ビクッと大袈裟に動く肩を
隣の理樹さんが更に引き寄せた


「随分な登場だな、亜樹」


間近で聞こえたのは
威圧感のある理樹さんの声で

また少し“怖い”と思ってしまった


「琴を攫ったのはお前だろうが」


・・・は?攫った?


驚いて理樹さんを見上げると
亜樹さんを睨んだままで


頭の中を色々が巡るのに
何一つ見出せることなんてなくて

混乱した私の耳に届いたのは
亜樹さんの哀しみを孕んだ声だった


「俺がお前から母親を奪ったから
今度は俺から琴を奪うのか!」


吐き捨てるように溢した
亜樹さんの言葉は私の頭を真っ白にした


隣でフッと笑った理樹さんは


「そうだと言ったらどうする?」


牙を剥く獰猛な亜樹さんを緩い声で煽った