「コンシェルジュの首藤と申します」


丁寧に頭を下げた男性に


「か、堂本琴です」


同じように挨拶して頭を下げた


紙袋からデリバリーの容器を出す透さんを手伝おうとしたのに


「琴は先にこっち」


理樹さんが首藤さんを呼び寄せた


「かしこまりました」


首藤さんは持ってきた機械で
私の両手の指、掌、目と
読み取らせていく


「ここに入るためな」


そう言って隣で頭を撫でた理樹さん


「可愛らしい妹さんですね」


「・・・あぁ」


・・・ちょっと待て!首藤さん!

これが普段じゃないからね?
ネコがプリントされた部屋着に
泣き腫らした顔

少し遅れた理樹さんの返事

理樹さんの妹だから気を使ったかもしれないけど
その“気”は不要だからね!

脳内抗議も虚しく


「失礼します」


首藤さんは帰ってしまった


・・・トホホ


「さぁ、温かいうちに食べよう」


綺麗に並べられた食卓テーブルに
誘われるように座った


「いい匂い」


カトラリーケースを開けて
取り出しながら

サラダ、スープ、パスタと
見ているだけで涎が出そう


「いただきます」


二人を見ながら手を合わせると
僅かに口角の上がった理樹さんが
頷いてくれた




・・・・・・
・・・



・・・フゥ


ちょっと多いかなと思ったけど
ぺこぺこのお腹に全部収まった

おまけに透さんがアイスクリームを頼んでくれていたようで

私だけ甘いドルチェが待っていた


「幸せ」


この幸せな時間が


あと数分で壊れるなんて


能天気にアイスを食べる私は


知る由もなかった