「す、すみません」


勢いに任せて飛び出した先で
大笑いされた私は

畳の上で小さくなっていた


ヤラレると勘違いした
“お爺さん”は
大きな怪獣を軽く投げ飛ばす師範

見た目で騙された?
完全なる思い込み?

どちらにしても
両手を広げてお爺さんを守ろうとした私を


お腹が捩れるほど笑ったお爺さん

“澤村白月”さんに
護身術を習うことになった


「星吾も着替えて来い」


白月さんに促されて
もれなく私と一緒に稽古をつけてもらうことになったせいごん

この日から
全身筋肉痛になる程の特訓を受けることになろうとは

全く想像すらしなかった



・・・・・・
・・・




2時間の特訓が終わると
三月なのに汗だくの私と

「久々の稽古」と爽快感タップリのせいごんは

別々の部屋に戻った


部屋のシャワールームを使い
部屋着に着替えると

髪を乾かすこともせず
ベッドに倒れこんだ


「・・・死ぬ」


重くなる目蓋に逆らえず
気絶するように意識を手放した





□□□




この時の私も



「ったく」


寝落ちした私の髪を
亜樹さんが優しくタオルドライしてくれたことも


「頑張れ」


起きない私にエールをくれたとも


気付かない程
熟睡してしまっていた



・・・いや・・・

亜樹さん?何故寝落ちが分かる?