「わぁ」


・・・これなに?


扉の中は

それはそれは大きなウォークインシューズクロークだった

中央付近の

【琴】と書かれたタグを指した親切さん


「この水色のコーナーがお嬢さんの靴棚です」


一体何足置けるのか?
水色で仕切られた私の棚には

既に何足も靴が並んでいた


「あの・・・」


先客か?誰かの忘れ物か?


私の脳内を読んだのか?


「これは若頭が揃えられた靴です」


そう説明した親切さん


(キャーーーーー)


しばし脳内絶叫


ローファーからブーツにサンダル
スニーカーにパンプスまで

理樹さんは私の好みがわかるのか?
実はサンタとか?
どちらにしてもテンションを上げる天才だ


・・・お礼言わなきゃ


気分を上げた私に親切さんは
ここの使い方を教えてくれた

帰宅時は玄関で靴を脱ぐと
此処へ片付けてくれる

外出時は此処へ来て選ぶと
玄関先へ靴を用意してくれる


・・・贅沢過ぎる


生活のギャップを感じながら

「今日はここで」と
クロークスペースで靴を脱いで玄関脇へと出る扉から
親切さんの案内で家の中へ入った


「自分、仲道星吾《なかみち せいご》っす」


半歩前を歩きながら
自己紹介してくれた

親切さん→星吾さん

今日から私の案内係になったらしい


「琴です。よろしくお願いします」


私より4歳も年上だから
丁寧に挨拶すると


「お嬢さん勘弁してください親父《組長》に叱られます
どうか“せいご”と呼び捨てで」


何度も頭を下げられたけれど
呼び捨てはできないと突っぱねて

“琴”と名前を呼ばないと
敬語もやめないと少し脅しておいた