大きなトラックの荷台前方に
存在感なく載った段ボールを横目に


母と私は熊の乗る
晴れの日に相応しい??
黒塗りの車に乗り込んだ


これは・・・新幹線か?


後部座席が向かい合わせって・・・
本当に車か?


それに・・・


足元フカフカ過ぎて居心地悪っ


土砂降りの雨なら
泥々だぞ?


生まれて初めて乗った
違和感満載の長い車に

片っ端から突っ込みを入れているうちに

悪の要塞・・・いや

新しい家族の待つ家へ着いた


「「「「お帰りなせぇやしっ」」」」


これは“ヤ語”にしてやろう
おかしげな言い回しを聞き流しながら

二週間振りに入る此処は
相変わらずの旅館風で

綺麗に並ぶ厳つい面々の大きな声に

もちろん肩もビクッと反応するけれど


「・・・ただいま」


「「「「っ!」」」」


俯いたままじゃなくて
真っ直ぐ顔を上げて歩くことが出来た


ただいまと会釈するたびに
厳ついさん達が少しずつ目線を逸らすのは何故だろう?


それに耳も真っ赤よ?


あ!あれ?


三月も後半で今日はいい天気だから
待ちくたびれて熱中症とか?


あ、


それは・・・無理があるか


いい天気だけど
暑くはない


ってことは・・・


サッパリわからん



脳内お喋りを楽しみながら
到着した玄関で

前に声を掛けてくれた親切さんが待っていた


「お嬢さん、こちらへ」


指し示された手の先に
靴を履いたまま移動出来る扉があった