「琴っ!」


「ヒッ」


大声で名前を呼ばれ
大袈裟な程ビクついた私

ドンドンと足音を立てて近づいてきたのは


「・・・亜樹さん」


更に後退した厳つい男性
いや・・・親切さん


「どうした」


「迷っていらしたようで」


「来い」


ガシッと腕を掴むと
ドンドンと足音を立てて歩き出した

亜樹さんの早歩きに引き摺られながら
振り返ると親切さんに頭を下げた


そこで角を曲がった私は


親切さんが“可愛い”と
悶えていたことを知らなかった



・・・・・・
・・・




「ほら」


少し乱暴な亜樹さんは
私の部屋まで案内してくれると


「後でな」


隣の部屋に入って行った

掴まれた腕をしばし眺めて

「あっ」

優羽への電話を思い出した

通学カバンの中からスマホを取り出すと

優羽の名前をタップした



□□□



熊とのやり取りを説明する私の焦りを
鼻で笑った優羽は

一日で両親を説得すると早々に電話を切った


「ハァ」


なんだか力が抜けた・・・

ソファにゴロンと寝そべると
緊張の糸が切れたようで

夢の中へと堕ちていった



・・・・・・
・・・




「チッ、またか」


またしてもソファで寝てしまった後で
部屋に来た亜樹


「風邪ひくぞ」


天使の頭を撫でると抱き上げた


「襲われても文句は無いよな普通」


無防備な寝顔を眺めながら

オデコにキスを落とした