「失礼するよ」


襖がスッと開いて
和服姿の男性が入ってきた


・・・デカい
縦にも横にも大きい

不躾な態度全開で視線を外せない私に
嫌な顔ひとつ見せない男性はニッコリと微笑むと


「皇さん」


座ったまま見上げる母の隣へ腰を落とし
更に目尻を下げた

顔は凄く理樹さんと似てる

でも・・・

理樹さんより優しそう

それに・・・

こげ茶色の着物の所為か
熊にしか見えない


母もいつもよりニコニコして
いつもより可愛さ3割り増し


・・・この人なら大丈夫かも


そんな気分にさえなってしまった



「起きたかな」


「・・・すみません」


「謝らなくて良い、大方
理樹が脅して気絶したんだろう」


・・・脅す?気絶?


またも駆け巡る物騒な言葉に
固まっていた脳が動き始める


「さぁ、行こうか」


動き始めた脳を再び遮断したのは

熊さんだった



少しシワになった制服を
適当に払いながら

開けられた襖から廊下へ出た


えっと、これは?

広くて長い廊下・・・
学校?旅館?

2LDKのマンションが基準の私の目に飛び込んできたのは


先導するように控えめに歩く男性

その後ろに
熊さんに肩を抱かれる母

そして・・・私

更に・・・・・・誰?

スーツ姿の男性2人
それも厳つい

最早恐怖しか感じない

いや

忘れていた恐怖が蘇ってきた感じ?


「ちゃんと挨拶するのよ」


顔だけ振り返った母は
また一つ私のハードルを上げた