「愛してる」


ギュッと隙間なく抱きしめられ
首元に顔を埋めた理樹の声が
首筋をなぞるように掠めてこそばゆい


チリっとする痛みが走った後
チュッとリップ音が聞こえた


「・・・っ」


理樹の唇が触れている肌が急速に熱を帯び

鼓動が強く打ち始める


甘い、甘すぎる・・・


大人の魔力に

いや、魔王様の魔力・・・か


どちらにしても

全く勝てる気がしない



「琴、好きだ」



理樹の言葉一つで
天国へも地獄へもいける

“愛してる”も“好き”も
理樹が囁いてくれる声を
忘れないように頭と胸の中に閉じ込めて



「私も」



想いが同じってことを伝えるだけで
幸せな気分になるほど

この気持ちは重症だ



身体の表面が真っ赤のまま戻らなくなるんじゃないかと不安になるくらい


広い部屋の中でぴったり寄り添っていた


もっと理樹に触れて欲しい


・・・・・・・・・ん?


触れて欲しいってーーーーっっ


私は淫乱か、はたまた変態か


また勝手にトラップする私の
脳内お喋りに応えるように


「大事にしたい」


甘い理樹の声がした



前に


・・・亜樹に言った言葉


私のことを好きだと言う亜樹へ


『ちゃんと向き合うから・・・
だから・・・
キスはしないで』

あの時私は確かにそう言った


『キスは好きな人とするんだから』

そうも言った

あぁ・・・私

もうあの時には理樹のことを好きだったのかな


じゃなきゃ

ストレートに気持ちを伝えてくる亜樹を

拒絶したりしない


自分の気持ちに触れて
目の前の理樹へ向き合う


私の全てを知って貰いたいし
これからの理樹の全てが欲しい




もう間違えたくない


理樹の隣は私だけの場所

私の隣はいつも理樹に居て欲しい


返事を忘れて脳内お喋りをしている
私を呼ぶように
背中に回された理樹の手が
もう一度ギュッと隙間をなくすように力を入れた



「ま、嫌だっつっても
   そのうち必ず俺が貰うけどな」



ほら


やっぱり俺様で愛しい猛獣





いや・・・







[魔王様]ね












fin