side 理樹






「・・・・・・好き」




躊躇いがちに聞こえた琴の声の後に
頬に柔らかな温もりが触れて・・・離れた



幻・・・じゃないよな



存在を確かめるように琴を隙間なく抱きしめた


俺なんかが琴の相手で良いのかと

俺みたいな奴を好きになってくれるのかと

躊躇う気持ちより嬉しい気持ちの方が大きくなる


でも・・・

一般人と恋をして結婚したら
この世界から抜けられる

その道を俺が潰していいのか



喜びと安堵と・・・不安と後悔と
相反する複雑な想いが一気に溢れてきた


だがな、答えは一つ


掴んだら最後
死ぬまで離してやれねぇ

猟奇的な胸の内を

抑えるように甘い琴の匂いを吸い込むと
不安な想いが晴れてくるようだった


腕の中に閉じ込めた琴に


「理樹?」


名前を呼ばれても


「・・・もう少しこのまま」


不安を払拭するために
離してやれなかった



琴・・・


琴を想うだけで胸の辺りが苦しくて

琴の笑顔が簡単に俺の鎧を外して
温かい気持ちにさせる

どうかその瞳に俺だけを映して欲しいと願っていたことを打ち明けたら笑うだろうか


亜樹の腕の中でNightの倉庫に連れ出される琴を見て

何度攫ってしまいたいと思ったことか

想いは相反して
本家に寄り付かないようにマンションへ籠った



我欲に溺れる歪んだ俺


妹にしてやれなかった俺


独占欲塗れの俺



そんな小さい俺を受け入れてくれた琴に







これから命が尽きるその日まで


いや


たとえこの身が滅びようとも



溢れんばかりの愛を捧ぐと心に誓った










side out