理樹に“好き”と言われたけれど

ルリさんのことや私の部屋のこと

自分の中で消化出来ない想いが
理樹との微妙な距離を生む



「琴」


「ん?」


「何か言いたいことが
あるんじゃないか?」


「ううん」



もうこのやり取りは10回を超えた


「琴」


「ん?」


「迷惑なら迷惑だと言え
琴の嫌がることはしたくねぇ」


違う、そうじゃない


「迷惑じゃない


嫌・・・なわけない」


でも・・・

いつも理樹の隣にしか座らない私が
ソファの向かい側に座っているだけで

勘違いさせることはわかっていた


でも

・・・理樹と向き合いたい


それは身体だけじゃなくて
心も同じこと


理樹を不安にさせることはわかっていて

態とこうしているのだから


「あのね」


「あぁ」


「・・・・・・ルリさん」


「ルリ?」


余程意外だったのか理樹の目が驚きに満ちた


「そう」


「ルリがどうかしたか?」


「あの店でみんな“若様”って

でも、ルリさんだけは“理樹”って」


色々端折って出した言葉に
一瞬考えた様子の理樹は

ゆっくり微笑むと


「ルリは昔馴染みで同級生なんだ」


そう言った


「同級生?」


「正確には小中の同級生だな」


私の知らない頃の話

そっか、同級生なら名前呼びもありか・・・

少しホッとした私に向けて
続く理樹の話は少し重いものだった


「ルリは透の女で、いや
女だった、か・・・」


10代目Nightの総長である理樹を
副総長としてずっと支えてきた幼馴染の透さん

高校を卒業して家業を継いだ時も
迷わず同じ道に進んだという

理樹の為に命を張る透さんの覚悟は
何よりも理樹を優先する余り

構ってあげられないルリさんを切ることから始まったという


「ルリと別れてからも

お互い誰ともくっ付くことなく

お互いを想いあったままだ」


少なからず責任を感じている理樹は
初めて見る苦悩の表情をしていた