理樹の胸にオデコをつけたまま
理樹の温もりに触れているだけで

乱れた気分が落ち着いてくるのがわかった


ずっとここに居たい


そう願う想いを躊躇わせるのは



『あ〜それ、妹』



やっぱり亜樹の言葉で


理樹も同じように思っているとしたら
私の想いなんて迷惑なもの

溢れ出た想いに蓋をした方が
自分もこれ以上傷つかずに済むんじゃないかって・・・


勝手な想いを終わらせる為に
勝手に自己完結させる

今までそうやってきたんだもん
同じようにできるはず



そしたら


理樹はいつまでも優しいお兄さんになる




頭の中では簡単な答えが
どうしても納得いかない


そうじゃないって


嫌だって


胸の痛みが邪魔をする


「琴」


耳と同じようにオデコからも伝わる理樹の低い声に

胸がドキッとする


でも、顔を上げる勇気なんて出ないから


「ん?」


声だけ反応してみる


「俺の側に居るのは辛いことか?」


理樹の声が震えていて
今度は胸が苦しい


一秒でも早く違うと否定したくて


「ううん」


オデコを胸に擦り付けるように頭を振った


「琴にはいつも笑っていて欲しい」


理樹の想いに触れたようで
胸に温かい想いが広がる


「その笑顔を作るのは
いつも俺でありたい」


「・・・」


「そう思ってるのに
いつも琴を泣かせてばかりで」


違う、そうじゃない
私が勝手に泣いているだけで理樹の所為じゃない


違う・・・


「どうしていいのかわからねぇ」


低く震える理樹の声に
止まっていた涙が蘇ってきて
否定しようとする口は開いてはくれなかった