部屋の入り口で突っ立ったまま
しばらく動けなかったけれど


二人の視線に気付いてハッとする



「ありがとう」



何も言わなければ
気に入らなかったかと心配される

それが嫌で先に口を開いた



「あぁ」



そう言って頭を撫でてくれた理樹

でも・・・

この部屋には安心する理樹の匂いがしない

いつも同じベッドで寝ていた
とても居心地の良い時間だったのに



気持ちに気付いた途端にこの部屋を見せられる


今の私には突き放された感覚しかなくて

落ちていく気分だけが残った


「もう眠い」


お風呂も着替えもどうでも良くて

カーディガンだけ脱ぐと
二人を視界に入れないままベッドの中に潜り込んで背を向けた


しばらくそのままで居た二人も



「・・・おやすみ」



様子のおかしい私に何も言うことなく部屋を出て行った


「・・・っ、ん・・・っ」



自分の気持ちに気付いただけなのに

こんなに苦しい

いつもと違う理樹との距離が
どんどん負のループを繰り返し

止まることのない涙が枕を濡らした


いっそ手離してしまえば
この痛みも苦しさからも解放されるのだろうか?


6歳も離れた年齢は
私を子供にして惑わす


いつまでも終わらない痛みの原因と向き合う時間

それを見ないふりも出来ない子供の私は

ベッドの中でグズグズ泣いて

そのまま意識を手放した





・・・





そんな私は

理樹に抱き上げられて

「一人で泣くことは許さない」

大好きな香りに包まれたことを






知らない