【居た堪れない】
心が平穏でなくなり、その場に
いるのが堪えられなくなるさま



・・・・・・
・・・






包み込むような重厚感のある
革張りのソファに座ってもう30分は経つだろうか


時折目の前のテーブルに置かれた
烏龍茶のグラスを持っては異常に乾く喉を潤す


一人分離れた所に座る理樹と
正面に座る透さん

そして・・・

露出度の高い煌びやかな服とアクセサリーで着飾った女性がソファの残りの席を埋めている


ハァ・・・
唇を開くことはないけれど
ため息だけが身体の中を占めるように

少し落とした視線がまた一つ下がった

理樹は多分左隣に座る私を見ていない

だって・・・

右隣にこの店のナンバー1が座っていて
絶えず理樹に話しかけているから・・・


高校生になったばかりの私と違って
ナンバー1のルリさんからは大人の雰囲気を感じる

時折、理樹の腕に触れる手
少し斜めに揃えた脚も僅かに膝が理樹に触れている

甘い声で
『この前は』とか『あの時は』とか

私が知らない話を延々と続けている

ルリさんだけでもお手上げなのに

周りに座ったナンバー3までの二人に
ヘルプに入っている三人

みんなそれぞれの思惑が渦巻いていて

お手上げどころか
寧ろ、敗北宣言してしまいたい気分

気分はそう・・・居た堪れない!


「琴」


そんな負け犬気分の私の名前を呼ばないで欲しい


「・・・」


返事したくない

だって・・・多分酷い顔してると思うもん


それなのに


「琴、大丈夫か?」


更に追い込んでくる理樹の顔を見ないように


「化粧室、行ってくる」


子供丸出しで立ち上がると


「私、琴ちゃんに付き添いますね〜」


理樹へ向けて媚びるように立ち上がった
名前も知らないナンバー2は


「さぁ」


と足元の誘導灯に向かって手を差し出した