トンと頬に当たったのは
リキさんの胸で

初めて触れる異性に
急速に鼓動が早くなる

呼吸を早くした鼻腔には
フワリと良い匂いが届いた


「あっ、ごめんなさい」


離れなきゃと思う身体はリキさんの腕が回されていてビクともしない

男の人の力って・・・


慌てる私を宥めるように


「此処にいろ」


そう聞こえたリキさんの声が心地よくて

フィットする革張りのシートも心地よくて

渋滞を進む車の微振動が心地よくて


この30分余りの極度の緊張から解き放たれた私は

リキさんに凭れたまま
ゆっくりと意識を手放し・・・








「寝ちゃったか」

「あぁ」

「しかし可愛い子」

「前、向いてろ」

「フッ、仰せの通りに」


理樹さんと透さんの会話が
聞こえることはなかった



□□□



そして・・・

車は静かに郊外へと進み
厳重なるセキュリティを潜り止まった


「透、黙らせろ」


「承知」


車の外に並ぶ男達を先に降りた側近が制する

やがて側近が後部のドアを開くと

いつもよりゆっくりとした動作で降りてきた男の腕には

セーラー服姿の眠り姫が抱かれていた


「「「「「っ!」」」」」


整列する男達の間を悠々と歩く男は
腕の中の眠り姫に一度視線を落とすと

フッと口角を緩めた


「「「「「っ!」」」」」









非日常が

日常になるまで

あと・・・数時間