鮮やかな色合いの料理が並べられ
テンションが上がった私は

箸を進めながら理樹と透さんの話を
どこかBGM的に聞いていた

なんだかカタカナ名前が多く出てきて

何を話してるのかサッパリ分からない

でも・・・
時折“利益”とか“水揚げ”とか聞こえるから

仕事関係ではありそう

その程度の興味だけで
目の前の料理に集中していた私は

途中・・・
巡回とやらの行き先が

私の心臓を弱らせる店になったとは
全く知らないでいた




・・・・・・
・・・




「ご馳走さまでした」


胸の前で手を合わせると
隣の理樹も同じように手を合わせた


「仕事モードに切り替えろよ」


目の前の透さんが呆れた顔をしていて
何のことかと首を傾ける


「心配するな」


理樹の返事は透さんへ向けたのか私にか判別不能な曖昧なもので

“仕事”と言われたからには
社長か若頭、どちらかのスイッチを入れないといけないのだろう


店を出て車に乗り込むと


「琴」


低い声で呼ばれて視線を合わせる


どうしたの?と身体を捻ると伸びてきた指先が唇に触れた


「・・・っ」


な、な、な、なんでしょうっっ

プチパニックに陥る私を見ながら
クスッと笑った理樹は

その指を舐めた


「・・・・・・っっつ」


薄暗い車内で見える理樹の表情は
陰影を作って恐ろしくセクシー

私の唇に触れた指を舐める舌は赤くて妖艶さを孕んでいる


クーーーーーーー!!


一瞬で頭から蒸気が噴出するほどの熱が上がり

早く、強く打ち付ける鼓動が
理樹に聞こえるんじゃないかと不安が増して

ドキドキする胸を押さえて瞼を閉じた