琴を着替えさせる為に
透が連れ出したあとで

ポケットの中の携帯を取り出した


大和からのメールをそのまま転送したものを食い入る様に読み進むと

亜樹の決意が並んでいた

それによって乱された琴の胸の内

琴の気持ちだけを想うなら複雑な気持ちになるものの

それとは別に
俺の痛む胸は一瞬で晴れた


「もう、遠慮はしねぇ」


誰に聞かせる訳でもない呟きは
さっきまで琴が魅入っていた空へ飛ばして社長室を出た


廊下で待っていた透は
先に車で待っているとヒラリ手を振った




暫く廊下の壁にもたれて腕を組んでいると
目の前の扉が開いた


急遽揃えたにしては
琴の魅力を引き出す洋服に


「よく似合ってる」


頭の中の想いがそのまま溢れた


・・・らしくねぇ


普段の俺からは想像出来ない言葉に


恥ずかしそうに薄く微笑み返した琴は


「・・・ありがとう理樹」


ごく自然に隣に立った


「ん」


少し照れくさい気分を誤魔化すように
脱いだ制服が入っているであろう紙袋を取ると

反対の手で琴の手を引いた


「あ、理樹?どこ行くの?」


エレベーターの中で俺を見上げた琴

繋いだ手にギュッと力が入る





・・・分かっているのか?






俺を見上げる瞳と

俺の名前を呼ぶ唇

控えめに微笑むピンク色の頬と

動くたび香る琴の甘い匂い


全てが俺を誘っていることを




亜樹のことを想っているなら

琴の幸せを願ってやるつもりの

封印した気持ちを解き放つことを





・・・・・・分かっているのか?






なぁ琴




これから



嫌という程








自覚させてやる











side out