微かに透の携帯のバイブが聞こえ
視線を移すとスライドしていた指が止まった

顔を上げた透が頷くと同時に
俺のポケットの中の携帯が小さく振動した


タイミングを同じくして


「あの・・・そろそろいい?」


態と声色を変えた透に


「・・・え」


腕の中の琴は肩を揺らして驚いた


・・・これは気づいてなかったな


本家の俺の部屋の水槽に張り付いた時といい

琴は一瞬で心を奪われると周りのことに鈍くなる


腕の中でクルリと体勢を変えて
抱きついているけど


これも然程気にしてないんだろう


でも・・・


腕の中に頬を染める琴


これでお兄ちゃんとしか思われていないとか


・・・・・・拷問だ


気持ちを上げ下げする琴の名前を呼ぶと


今度は腕の中から抜け出そうと一歩後退して窓にぶつかった


・・・・・・そんなに嫌か?


少し屈んで顔を覗き込むのに
俯いた所為で見えなくて

顎を持つと引き上げた


・・・っ


やはり、琴の瞳は赤くなっていて
頬に涙の落ちた跡がついていた

それを指で拭っていると

頬がゆっくり赤らんでくる

潤んだ瞳に染まる頬
視線を合わせた琴は高校生とは思えない程色香を孕んでいて

琴から目が離せない


「・・・琴」


何度目かの呼びかけに

琴の瞳から涙が溢れ落ちた


瞬きを繰り返すたび涙を溢す
その瞳を見るだけで

抱き寄せて俺の胸に閉じ込めてしまいたいと欲深さが渦巻く


透からのメールを確認することさえもどかしい想いを


なんとか誤魔化すように
琴の瞳に唇を寄せた