side 理樹


今日から学校へ復帰した琴は
不本意だけど透に託した

保健室登校から始める

それは透からの提案

琴と同じだけ休んだ俺への当てつけも含まれているだろうそれも
琴のことを一番に考えられていて

どうせなら快適に過ごしてもらいたいと
理事長に教室の改造と透を置くことを伝えたのは俺の独占欲だった

時折届く透からの写真付きの報告メールに口元を緩めながら

デスクの上に山積みされた仕事をこなした

夕方会社に顔を出した透と
少し打ち合わせをしていると
ポケットの中の携帯が震えた

画面に表示された名前に
迷い無く指をスライドすると

耳に飛び込んできたのは


(迎えに来て)


それはまるで・・・
『助けて』と言ってるように聞こえる震えた琴の声だった


「琴を迎えに行ってくる」


「え?」


「心配するな、戻るから」


透を会社に残したまま
待っていた車に乗り込んだ



・・・・・・
・・・






泣き出しそうな琴を腕の中に閉じ込めて会社に戻ると


「ワァ」


窓に張り付いた琴

その背中を追うように近づくと

小さな身体が震えているように見えた


・・・何があった


チラリと透を振り返ると
頷いて携帯を取り出した


名前を呼んでみても
振り返らない琴をそのまま腕の中に閉じ込めてみる

隙間なく抱きしめた俺の手に
そっと重ねられた琴の手は
少し震えていて

泣いているんだと思った


・・・クソっ


琴を乱したのは間違いなく亜樹

亜樹の為に涙を流す琴に
俺がしてやれることは・・・

泣いてる琴より痛む胸の理由を今は少し封印して

琴の為に俺が出来ることを一番に考えようと頭の天辺に唇を付けた