理樹に肩を抱かれたまま病院から連れ出してもらった私は


車の中でも理樹にべったりと張り付いていた


「大丈夫だ」


何も聞かずいてくれる理樹の声に

騒ついていた気分が幾分落ち着いてきた


「会社」


そう運転手さんへ告げた理樹の声を聞いた瞬間

罪悪感が押し寄せてきた


・・・あぁ、そうだった

私を病院へ送り届けてくれた透さんは


一度会社へ戻るって言ってたのに

私は・・・

私の都合で忙しいはずの理樹を動かしてしまった



「・・・ごめんなさい」



間近の理樹を見上げると


「琴が心配することじゃない」


合わせてくれた視線はとても優しくて
申し訳ない気持ちが広がる


「でも・・・」


もう一度だけ謝ろうと思った声は


「琴より優先することなんて
俺の中にはひとつもない」


簡単に遮られた

どうしよう・・・嬉しすぎる




「ありがとう・・・理樹」



「あぁ」



緩められた頬を見て少しホッとした


病院から然程離れていないビルの地下へ滑り込んだ車から降りると

理樹に肩を抱かれたまま
セキュリティの厳重なエレベーターへと乗り込んだ


デジタルパネルの流れる矢印を見ていると


階数が表示されることなく止まった


・・・え?どういうこと?


突っ込みどころ満載の
頭の中の疑問に答えるように


「これは直通だ」


閉塞空間から出ると長い廊下を
私の歩幅に合わせてゆっくり歩いてくれた