side 亜樹


兄貴と笑い合ったのはいつ振りだろう

兄貴と手を繋いだのも

兄貴の涙を見たのは初めてか?


兄貴に頭を撫でられただけで

ずっと胸の奥に抱えていた劣等感が
スーッと消えて無くなった



いつの頃からか

兄貴という
憧れの存在は

疎ましい存在に変化して

それが俺の足掻きになった


親父が再婚すると聞いた時

兄貴より先に姐さんと仲良くなって

兄貴より先に妹を手懐ける


そんな想いしかなかった


だから


何も知らない琴を縛り付けることしか思いつかなくて

恰もそれが自分の気持ちだと
錯覚してしまった

強引に腕の中に取り込んで
強引にキスもした

強引に好きだと告げて

強引に拒むなと逃げ道を塞いだ


ただ・・・

兄貴への当てつけの為だけに


琴の気持ちを弄んだ





大切に護るべき妹なのに


縛り続けた俺


確かに・・・
琴の容姿も性格も仕草も

全て愛おしくて好きだ


でも・・・


それは・・・


LIKEであって


LOVEじゃない



兄貴との蟠りが消えた後
兄貴の腕の中で泣いた琴を見て

兄貴の背中にごく自然に手を回す琴を見て


やっと気付くなんて・・・



俺のつまらない考えを
綺麗に消すことに決めた


琴が見舞いに来るまでに
大和と永遠に説明して

永遠の一つ上の姉貴に
カムフラ役を頼んだ






考えれば・・・


琴には酷いことをした


俺の所為で襲われるし
虐められるし


たぶん

ファーストキスも



あぁ・・・



俺、サイテーだ






side out