亜樹の病室のドアをそっとスライドすると

泣きながら笑いあっている二人が居た


・・・良かった


中に入っても良いだろうか
兄妹になったとはいえ
元々兄弟の二人の所へ行く勇気はまだなくって


変に躊躇っている私に
内側の護衛さん二人は“どうぞ”と手を差し出した



その手を掴む寸前に


「琴」


低い重低音で遮ったのは
いつもの表情に戻った理樹だった


「おいで」


その声に躊躇う気持ちがなくなり
ベッド脇まで近づくと


「・・・っ」


赤い目をした二人の表情が
とても穏やかに見えて
何故だか凄く泣きたくなった


「どうした」


柔らかに降る声は理樹


「お前まで泣いてどうする」


呆れた声は亜樹


・・・嬉しい


大した時間を一緒に居た訳ではないけれど


素直に喜べるのは
二人の想いを知っていたから・・・



「きょ、うだいっ・・・て


いいな・・・。」






そう途切れ途切れに零しながら
両手で顔を覆った私を


優しく抱き寄せてくれたのは
もちろん動ける理樹で


そっと撫でてくれる頭と


いつもの安心する理樹の香りに包まれて


いつものように理樹の背中に腕回して隙間なく抱かれていた私は








その時




亜樹がどんな想いでそれを見ていたか



どんな決意をしたのか




全く気づけなかった