「痛い?」
小型ナイフとはいえ腰を刺されたのだ
痛くない訳もないのに分かっていることを聞いてみる
勿論答えは決まったように
「少しな」
そう言って少し顔を歪めた亜樹
マンションでの理樹とのやり取りが頭を過ぎる
あの一件で仲が悪いと思い込んでいた二人
でも・・・今回亜樹は理樹を庇って刺された
ってことは?
二人の母親のことにまで首を突っ込んではいけない話だけど
理樹は亜樹が刺されたことを相当悔やんでいる
それに
亜樹は避けきれない状況の理樹を咄嗟に庇うほど本当は理樹のことを想っているはず
キッカケがないだけで二人の想いは同じなんじゃないだろうか?
そんなことばかりが頭を巡る
大人しく病院にいる今がチャンスとばかりに
一歩踏み出してみようと考えつく
んーーーーーーーでも
どうすれば良いんだろう?
一人っ子だったのよ?私
それに
無口で無愛想なのよ?私
兄二人の為に何か出来ることはないか
ウトウトし始めた亜樹の顔を見つめながら
繋がれたままの手をジッと眺めた