・・・あぁ、残念


郡夜組の目と白夜会《うち》の奴らを掻き分けて理樹の隣に立つと
既に山部も外国人も地べたに沈められていた


外国人はこれから吐かせる必要があるからそれ程でもないが


山部は裏切り者


最近は滅多に手を下すことのない理樹が自らの手で沈めたようで

腕も脚もありえない方向に曲がっていて
その身体はピクリとも動かない


「透・・・一ノ組の倉庫へ」


山部に近づいて
しゃがみ込む理樹


「あぁ」


返事をしたものの胸の中にモヤがかかった


・・・なんだ?


この違和感の正体は・・・


ゆっくり地べたの二人を見やった瞬間


目の前の車のドアが乱暴に開き
ナイフを持った外国人が飛び出してきた


・・・シマッタ、鼠は2匹だ!


すぐ目の前には背中を向けてしゃがみ込む理樹がいる



「理樹っ!」


俺の声に気付いて


「て、テメエ」


立ち上がって避けようと身体を捻る理樹


間に合わないっ
そう思った瞬間


周りに控える組員が動き出すより
先に飛び出した影が理樹の背後に回った


そこからはコマ送りのようだった


ナイフを持ったまま打つかる男


ドンっ


「ヴッ」


驚いた理樹が目を見開いた


「亜樹っ!」


あの影は亜樹・・・・・・クソっ


倒れる亜樹を抱きとめる理樹と
血のついたナイフを持ったまま震える外国人


溢れる組員達がそれを取り囲んだ




「「「「「テメエ、ゴラ」」」」」





◻︎◻︎◻︎◻︎




「車を出せっ」


亜樹を抱きとめたまま泣くように叫ぶ理樹を車に乗せ橘病院へと電話をかけた

残った組員と対象の三人を一ノ組へ送るよう指示を出す


離れた位置に置いていた別の車を動かすと


放心するように座り込む琴ちゃんが見えた



・・・ヤバい



さっきはパニックに陥っていたからか
俺が触れても大丈夫だった琴ちゃん

せっかく治りかけなのに

亜樹のことに気付いたら・・・

そう思ったら居ても立っても居られなくて駆け出していた


走る俺の視界の中で


座り込んだ琴ちゃんが
スローモーションのように倒れた



「琴ちゃん!」




side out