「あ、あの・・・」


「あ゛?」


・・・え?


腕は掴まれたままだけど速度が遅くなった組員さん


それでも呼びかけに止まってくれる様子もなくて


更に・・・

・・・機嫌が悪い?


堂本の屋敷に居る組員さんたちは私に向けてこんな反応はしない

少しずつ不安になる気分をドン底に落としたのは


「ヨォ」


広い駐車場の隅に停まったフルスモークの黒いセダンから降りてきた見たこともない外国人だった


ーーーーーーー怖い


急に震え始める身体と離された腕に残る跡


・・・もしかして


頭を過る嫌な思いはまだ消化できていない

それなのに


・・・・・・また?


「コイツ、ダレ?」


「堂本の娘です」


「ヘェ」


私をここに連れてきた組員さんと見るからに怪しい外国人


そして・・・


もう一人別の男が車から降りて来た

風に漂うトロピカルな香りが鼻について気持ち悪い


なにより・・・


ーーーーーーー怖い


掴まれた腕が僅かに解放された瞬間
膨らむ恐怖をゆっくり吐き出して踵を返すと走り出した


「お、待てっ」


まだ痛む膝もなんとか動いてくれている

無我夢中で駐車中の車の間を走り抜けながら


どこへ向かうか考えていた


・・・モールへ入れば人混みに紛れる


そんなことを考えた瞬間
車の間から伸びてきた手に捕まった


・・・キャッ


驚いて声も出ない私の口を塞ぐ手

でも・・・その手から肩の力を抜く匂いがした


「シーー」


大きなワゴンの横を指差して辺りを見渡すのは


「・・・透さん」


「シッ」