「上手くいったね」


隣を歩く優羽が見せる笑顔にようやく私も肩の力が抜けた


「まだドキドキしてるっ」


胸をトントンと叩くと


「何分持つかなぁ」


「へ?」


「理樹さんの包囲網」


さっきまでの笑顔に小悪魔が入っている


「電話した方が良いかな?」


包囲網って怖すぎると急に不安になる


「友達が来て出かけるのにお兄ちゃんの許可はいらない」


真顔で答える優羽の変わりように内心ギョッとしたけれど


「そ、だよね・・・」


上手く合わせるつもりが・・・噛んだ


「ブッ、くっ、ウケる」


堪え切れないように笑い始める優羽


・・・え?なに?


「琴、ちゃんと妹やってるね
なんだかちょっと羨ましいよ」


そう言って立ち止まると私の両頬を挟んで笑った


「どうしたの?」


両頬を挟まれたままで喋り難い


その顔を一頻り笑った優羽は


「誰かに頼ったり、興味を持つって
無かったじゃない・・・だから、心配だったんだよ?」


挟んだ両頬を指で摘むと引っ張った


「いひゃーーーい」


・・・これは拷問でしょうか?


目の前でお腹を押さえて笑い死にそうな優羽は

今日も今日とてポニーテールが左右に揺れて凄く可愛い

だって・・・

道行く男性が優羽を見て笑顔にやられているんだもん


「ゆ、う・・・さん?」


ヒィヒィ息を切らして目尻の涙を拭う優羽


いくら私の顔が可笑しかったからって
酷くはないかい?

見つめる私の視線に気づいた優羽は


「やだ〜、琴の所為で注目の的じゃん」


頬を膨らませた




・・・・・・
・・・






理樹の部屋を抜け出した


久しぶりの親友との時間を


この後・・・


死ぬほど後悔するなんて・・・


浮かれた私はちっとも知らなかった・・・