「気持ちに正直になるのは良いことよ
でもね・・・焦ることないの
揺れる気持ちに意味を持たせるのは、もう少し後でも良いと思う」


真っ直ぐ見つめる瞳には少し不安な顔の私が映っていて


優羽の落ち着いた声に肩の力が抜けた


「会いに行こう」


「・・・え?」


「こんな所に隔離されてたら治るものも治らないわよっ」


大きな水槽の中をゆったり泳ぐ熱帯魚を見ながら渋い顔をした優羽


「もし・・・」


「ん?」


「もし、亜樹と会って震えたら
また少し休んで再挑戦すればいい」


「うん」


「諦めるんじゃないわよっ」


「うん!」



やっぱり頼もしい親友は心友で
私の心の中なんてお見通し



「だから・・・早く着替えておいで」



猫耳のついたパーカーを指差した


急いで着替えた私と手を繋いでエレベーターに乗った優羽は



「私が引きつけてる間に出なよ」



コンシェルジュの首藤さんを撒く方法を考えていた



・・・上手くいくだろうか?


不安しかない私を見てクスッと笑った優羽は


エレベーターの扉が開くと真っ直ぐカウンターへと歩き


私は大きな観葉植物とオブジェの後ろに隠れてその時を待った



・・・かくれんぼもビックリさ



高校生にもなってマンションから出るだけで体力消耗


いや・・・


小心者の私が大それたことをするなんて


精神的ダメージが大きすぎて吐きそうになる


その間にも状勢は動いていて


カウンターから上手く連れ出された首藤さんがこちらに背を向けた瞬間に優羽の右手がサッと入り口に向けられた


・・・頑張れ私


猫のようにしなやかに・・・

魚のように素早く・・・

ただ正面入り口を目指して駆け抜けた