もしかしたら・・・
亜樹を見てまた震えてしまうかもしれない

それでも・・・



無性に亜樹に会いたいと思った




溢れる涙を拭いてくれている優羽の指が止まった


「琴?」


「ん?」


「本気?」


「・・・え?」



私の携帯を取ると


「ちょっと掛け直すから」


亜樹へ一方的に告げると切ってしまった


・・・ん?


キョトンとする私の両手を持つと正面で真剣な表情を見せた


「会いたいって?」


「・・・え?」


「声に出てるから・・・」


「嘘?」


「会いたいの意味、分かってる?」


「・・・」


そこまで私も馬鹿じゃない
この“会いたい”は顔を歪ませた亜樹を
楽にさせてあげたい気持ちと繋がっていることは理解している


「本気?」


「うん」


「急に兄が2人も出来たから手近で済ませる作戦じゃない?」


「・・・うん?」


なんだろうその作戦は・・・



「無理に2人のどちらかにしなくても
他にも山ほど男は見つかるわよ?」



優羽の言葉と私の想いは少し違う気持ちもするけど・・・



「わかってる」



「わざわざ危険な相手を選ぶことに覚悟は出来てるの?
また今回みたいな・・・ううん
今回以上のことになるかもしれないのよ?それでもいいの?」



「・・・うん」


怖くて・・・
痛くて・・・
気持ち悪くて・・・


橘院長は亜樹の所為にして心を軽くしろって言ってくれたけど


それでも・・・


私の想いと天秤にかければ
亜樹の辛い顔を見る方が嫌だと思えるほど


亜樹の笑顔が見たいと思う


俺様で横暴で・・・
狼みたいに威圧的だけど・・・


「亜樹に会って話したい」


言葉にすると
胸のつかえがフッと軽くなった



「・・・わかった」



優羽は一度目線を合わせて肩に手を置いた