理樹さんのマンションに着くと
透さんは遠慮して同じエレベーターには乗らなかった

申し訳ない気持ちより
もしか震えたら・・・と考えると

透さんの配慮はありがたかった


でも・・・


「どうした」


どうしたと聞かれましても・・・

病院からずっと理樹さんに抱かれたままで靴も履いていない


「自分で」


「まだ痛むだろう」


・・・確かに全身痛いんだけど


過保護状態の中
リビングのソファに座った


「琴」


「はい」


「先ずは敬語をやめろ
それから・・・理樹って呼べ」


ゔぅ・・・
痛いところを突かれてしまった
これまでは上手く躱せていたはずなのに


「は・・・うん」


亜樹相手にはすぐ直せたそれも
理樹さん相手にはかなりハードルが高い


「琴が困らないように色々買い揃えたんだ」


サッと立ち上がってキッチンへ行くと

ガチャガチャと鍋とフライパンを取り出して“ほら”と見せた


「ワァ」


もしかして料理が出来るかもと
近付こうとしてしまった


のが


いけなかった


ソファから立ち上がって
一歩踏み出そうとした瞬間

膝に痛みが走って
ブサイクに転んでしまった


「っ、痛、たたたたた」


「琴っ」


慌てて駆け寄ってきた理樹さんに起こされて・・・


「何もしなくていい」


結局膝の上に抱かれることになった


ゔぅ・・・


そんなつもりじゃないんだけど・・・