一泊しただけの入院は

何故だか白壁が怖くて

優羽が泊まってくれなかったら
正直トラウマになったかもしれない


「それにしても臭いねぇ」


湿布薬を大量に貼り付けた私に
冷たい言葉を打つける優羽

それでも最後は


「早く治して学校に来てね」


変わらず可愛い瞬きをしながら
小さく手を振って見送ってくれる姿に

分かりにくい優しさが見えて
温かい気持ちになった


「大丈夫か?」


「はい?」


何故に抱っこ?
理樹さんの膝の上に抱かれた私は

なん度も気遣う理樹さんに
答える度に顔を赤くした


「シスコンだな」


助手席から振り返る透さんと目が合うと
ビクッと肩が揺れた


「ごめん、琴ちゃん」


直ぐに気付いて謝ってくれる


「私こそごめんなさい」


そんなつもりはないけれど
やっぱり理樹さん以外は身体が受け付けないようだ


・・・あれかな


男達に囲まれた時に
思い出した理樹さんの言葉は

抵抗するキッカケをくれた

理樹さんの声を思い浮かべていた
あの苦しい時間・・・


ツーっと頬を伝う涙に気づいた理樹さんは


「大丈夫だ、琴、俺がいる」


零れた涙に口付けた

心に響く重低音に強張る身体から力が抜けて

理樹さんの香りに包まれたくて
そっと胸に頬を寄せた


「どうした」


「理樹さん・・・ありがとうございます」


理由なんて説明つかなくて
ただ、理樹さんと居るとホッとする

そんな不安定な私は
また・・・
理樹さんのスーツを濡らしてしまった