「辛いことは全部吐き出せ」


そう言って少し離れた理樹さんは
ぐちゃぐちゃの顔をハンカチで拭ってくれた


もちろん・・・

お高そうなスーツは
私の涙と鼻水でテカテカしていて


「ごめんなさい」


借りたハンカチで拭こうとしたけれど


「そのままでいい」


穏やかに笑った


「琴、大丈夫?」


少し離れていた優羽が顔を覗き込んで


「うん」


「亜樹達の顔見ただけでガタガタ震えたのに・・・」


心配そうな顔を緩めた


「あっ」


そうだった・・・
院長だって


『若い男に攫われたんだ。暫くは受け付けないはずだ』と
トラウマ発言までしたのに・・・


「理樹さんは・・・平気みたい」


不思議だけど身体はなんともなかった


「理樹さんも若いのに・・・」


腑に落ちない風の優羽


「俺は大丈夫ってことか」


顎に手を当てて
暫く考えていた理樹さんは


「退院したらうちで預かる」


突拍子もないことを言い出した


「でも、それが良いかもよ
あの家って若い男だらけじゃん」


優羽は納得したように頷いている


・・・あぁ、そうだった


堂本の家には若い組員さん達が沢山居て

亜樹達だけで震えてしまった私は
どう考えても無理に違いなくて


「少しずつ慣らせばいい」


そんな理樹さんの提案に簡単に頷いた