トントンとドアがノックされ
スライドドアが開く


「目が覚めたようだな」


・・・あ



その見知った顔に少しホッとした


「だから俺が反対したんだ」


そう母に向けて放った院長

その一言に
熊を選んだ母への戒めが含まれていた


「琴」


近づくと頭をひと撫でして


「骨は大丈夫、痛みは打撲。擦過傷もそのうち消える。後は、ここかな」


自分の胸の辺りをポンポンと叩いた


「精神的なものは自分で乗り越える必要もあるけど
亜樹の所為にして心を軽くするのが一番」


ニッコリ笑って穏やかに話してくれる院長コクンと頷いて見せた


「詫びを聞いてやってくれ」


ドアの方を向いた院長の声を待っていたかのように

スーッとドアがスライドした


「・・・っ」


開いた先に立っていたのは


酷く辛そうな顔をした
亜樹と永遠と大和だった


バタンと大きな音がして
気がつくと三人が床に土下座していた


「琴、すまない」


「「琴ちゃん、ごめん」」


頭を床に擦り付けるように
謝り続ける三人


「・・・大丈夫、だから、頭をあげて」


絞り出した言葉と裏腹に
身体は小刻みに震えていて

優羽がおまじないのように
“大丈夫”って声をかけてくれるのに

身体の震えは大きくなるばかり


「若い男に攫われたんだ、暫くは受け付けないはずだ」


院長の声に頭をあげた三人は
辛そうな顔を更に歪ませた