ボンヤリと目を開けると母が心配そうにこちらを見ていた


・・・えっと


考えようとする頭を止めるように


「もう少し寝なさい」


優しく頭を撫でられて
微睡む目蓋がゆっくりと閉じた




・・・・・・
・・・




再び目を覚ますと


そこには少し眉毛を下げた優羽もいて
手を繋いでくれていた

ツンと鼻につく消毒液の匂い
白い壁、白いベッド


ぶら下がる点滴のバッグ


・・・あぁ、そうだ


学校での悍ましい光景が
一コマ一コマ蘇ってきて

急に身体がガタガタと震え始めた


「琴!大丈夫だから」


震える身体を抱きしめて
何度もそう言ってくれる優羽


「そうよ琴ちゃん亜樹君が助けてくれたから」


頭を撫でる母の声は
いつもより柔らかだった


・・・亜樹


記憶を繋げる度に身体中に痛みが走る


・・・階段から落とされたんだった


もう駄目かもしれないと絶望した時
私の名前を呼ぶ亜樹の声が聞こえたんだった


「・・・怖、かった」


優羽の匂いに安心しながら
込み上げる感情が止まらず




子供みたいに声を上げて泣いた







ドアの向こう側で
私の泣き声に顔を歪ませる亜樹がいたことを知らずに・・・