「何だぁ? てめぇ、この女の連れか?」

「そんなんじゃないけど。嫌がってるからその手を離せって言ってんのよ」

「他人なら関係ねぇだろ。それとも、てめぇが俺らの相手すんのかよ?」


警察を呼ぶと言えば、大人しく引き下がると思っていたのに。

なのに、何だか面倒な方向に話が進んでいる気がする。



「じゃあ、一緒に警察署に行こうよ。そこならいくらでも相手してあげる」

「ナメんな、こらぁ!」


肩口を突き飛ばされ、地面に転ぶ。

咄嗟についた手が痛い。



「あんたらねぇ、こんなことしてタダで済むと思わないでよ」


それでもハッタリを言った時だった。



「おい、もうやめようぜ。みんな見てるよ。いいから行くぞ」


冷静だった男のうちのひとりが、逆上した男の腕を強引に引く。

男は舌打ちを吐き捨て、大人しくその場を去った。


どうにかことなきを得たので、私はため息混じりに立ち上がる。



「だ、大丈夫!?」


慌てた女性が私の体を支えてくれた。

手は擦り剝いていたが、我慢できる。



「大丈夫です。気にしないで。それよりお姉さんが無傷でよかったです」

「何言ってんのよ! あなた、あのままだと私の代わりにあいつらに連れて行かれてたかもしれないのよ!?」

「そうかもしれないけど。まぁ、結果オーライ?」


笑った瞬間。



「杏奈!」