そんな程度のことでいいのだろうか。

私はもっとこう、神藤さんの色んな気持ちに触れたいのに。


まぁ、所詮は偽装結婚だし、私が勝手に寂しがっているだけなのかもしれないけれど。



話しながら歩いているうちに、駅に着いていた。



「俺ちょっとスーツケース取ってくるから、お前はここで待ってろ」

「あ、じゃあ、私、そこのコンビニで酔い覚ましの飲みもの買うね」


言って、ふたり、別々の方向に歩き出す。



苦手なワインを飲んだのがいけなかったのかもしれない。

自分の感情がぐちゃぐちゃすぎて、私自身、もうよくわからなくなっていた。


昔はどうやって恋愛してたんだっけと、思い返してみても、記憶は曖昧だ。




とぼとぼと歩いているうちに、コンビニに到着したのだけれど。



「ちょっと、離してよ」

「いいじゃん。お姉さん、暇なんだろ? 俺らと遊ぼうぜ」


美人が複数の男たちに絡まれていた。



マジか。

見て見ぬフリもできるが、しかしそれでは後味が悪すぎる。


私は自分の陰鬱さを振り払いたくて、強く一歩を踏み出した。



「ちょっと、何やってんのよ! その人、嫌がってんじゃん! 警察呼ぶよ!」


私の大声に、男たちの目が向いた。