「これ、見てよ。中学の時の友達から届いたんだけど」


結婚式の招待状。

ナナはそれをひらひらさせながら、大きなため息を吐いた。



「羨ましいよねぇ。私も子供の頃は、普通にお嫁さんになりたいとか思ってたんだけどなぁ。それがどうしてキャバなんてやってんだろう」

「ナナ、結婚したいの?」

「ほんとはね。夢のまた夢だけど。相手すらいないし」


結婚したいなんて、私は思うことすらなかったので、驚いた。

毎日を繰り返すだけで精一杯だし、何より私にはまともな両親がいないから、それがどんな生活なのかもわからない。



「アンナはどう?」

「カレシにお金奪われて逃げられた私に聞かないで」


自虐的に返すと、ナナは笑う。

私も笑いながらドレスに着替えた。


あの頃はショックが何重にも重なって死にたいとすら思ったけれど、でも自殺する勇気はないから、だから前を向いて必死に生きるしかないのだ。



「今日も頑張ろうね、ナナ」


自分にも言い聞かせるように言いながら、私は静かにロッカーの扉を閉めた。