これまでの人生が走馬灯のように蘇ってきて、でもそのどれもが幸せな場面ではないのが悲しいけれど。

だけど、もうこれで楽になれるかなと思ったのに、いつまで経っても体に衝撃は感じない。


恐る恐る目を開けると、車は私の前方数十センチで止まっていて、息を吐いた男が降りてきた。



「お前、マジでふざけんなよ」


低い声。

ヘッドライトを背にしているので男の顔は確認できないが、でも声色で怒っているのだろうということだけはわかった。



「自殺したいなら止めないけどな、人に迷惑かけてまでやることかよ。お前の所為で俺は人殺しになるところだったんだぞ。死にたきゃひとりで死ね」


どうやらこの人は、私を自殺志願者だと思っているらしい。

確かに、急に車道に出てしまった私も悪かったけれど。


でも、腰が抜けたのと、無理に動いて熱が上がったのとで、私は立ち上がって謝罪することもできなくて。



「おい、聞いてんのかよ」


男の近付いてくる足音を聞きながら、私の意識は暗転した。