食事中、梨乃は私に大量のご飯を盛り、「妊婦はふたり分食べなきゃね」と言った。

「それ古いよ」と私が突っ込むと、横で高峰さんが大爆笑していた。


今頃、神藤さんはちゃんとご飯を食べているだろうかと心配になったが、でも首を振って考えを打ち消した。



食後、高峰さんが煙草を吸うために外に出たタイミングで、梨乃が私に声をかけてきた。



「実はさ、昨日、あのあと、私、お母さんと電話したんだよね。杏奈の状況を伝えて、どうしたらいいかなって相談したの」

「えっ! 私のために!?」


梨乃は昔からずっと、お弁当屋という実家の家業を嫌っていた。

ただ単に恥ずかしいからというのもあるが、両親揃って忙しく、ほとんど構ってもらえずに幼少期を過ごしたことが悲しかったからというのもある。


それに加え、兄嫁が家に入ってきて、他人がいることで余計に居心地が悪くなり、一方的に家を出たのだ。



「別に今まで、家出てもまったく連絡取ってなかったわけじゃないし」


でも、だからって、私のために。



「たまには顔見せろって言われた」

「心配してんだよ、おばさんも。何だかんだで母親だもん」

「だよね。今は、ちょっとだけ、お母さんの気持ちもわかる気がする」