正直、あんなに痛くて怖かったのにこの程度なのか、とは思う。

だけど、もらえるだけまだマシなのかもしれない。



「わかった。これでいいよ。あんまり高峰さんにも迷惑かけらんないし」


実際、保険会社との難しい話なんかは、すべて高峰さんがやってくれていた。

だから私はこれまで、無用なストレスなく毎日を過ごせていたのだ。



「じゃあ、これにサインして」


言われた通り、私は書類にサインする。

高峰さんは運ばれてきたコーヒーをすすりながら、また笑った。



「それより、梨乃ちゃんから聞いたけど、神藤とヤリまくりなんだって?」

「なっ」


身構えてさえいなかった質問に、思わず文字が歪んでしまった。

慌てて顔を上げたら、高峰さんは「ほんとだったんだな」と、にやにやする。



「違っ、いや、違わないこともないけど」


真っ赤になって言う私を見て、高峰さんは笑い転げる。


ずいぶんと口の軽い大親友だ。

しかし、あれからもまだ、梨乃と高峰さんが連絡を取り合っているとは思わなかった。



「梨乃から何を聞いたのよ」

「別に。普通にラブラブだって。羨ましい話だよなぁ。俺を振っておいて、神藤を選ぶなんて」

「振ってないし。誤解されるようなこと言わないでよ」