こんなに優しく抱かれたのは、初めてだった。
裸のまま、ベッドでまどろみながら、煙草を咥えた神藤さんは、長く煙を吐き出した。
「やばいな。このままだと、ほんとに仕事のこと考えらんなくなりそうだ」
「何?」
「別に」
煙草を消して、神藤さんは私の体を引き寄せる。
「お前は、あれだ。今後は車にだけはとにかく気を付けろよ」
「でも、事故に遭ったけど命は助かったと思えばラッキーだし、そもそも神藤さんの車に轢かれかけたから今こうなってるんだから、私って運がいいのか悪いのかわかんないよね」
「ちゃんとまわりを確認しろって意味ってだよ。そうでなくてもどんくさいんだから」
「また悪口だ」
抱き合いながらも、いつもの調子。
だけど、これほど安心することはない。
目が合って、私たちは笑いながら、また何度目かのキスをした。
「ありがとね、神藤さん。大好きだよ」
今まで言えなかった分まで、何回でも伝えたかった。
神藤さんは、私を抱き締める腕の力を強くする。


