待ち合わせの場所は、神藤さんの会社とマンションの、ちょうど中間くらいのところにある、大きな交差点だった。


神藤さんに会いたいのか、それとも会いたくないのか。

早足で歩いては足を止めて、話の内容を想像しては緊張して、と、そこに到着するまでの間に私は半泣きになっていた。



ほぼ時間通りに着いて、あたりを見まわしてみたが、まだ神藤さんの姿はない。



携帯を取り出すと、「あと5分くらいで着くから」という、神藤さんからのメッセージが入っていた。

バッグに入れていたから気付かなかったが、送信時間は5分前だ。


そろそろだなと思って再び顔を上げたら、横断歩道の向こうに、神藤さんが立っていた。


通りを挟んで、互いの顔を見る。

久しぶりに顔を見られて嬉しいはずなのに、なのに反面で、今すぐにでも逃げ出したいような気持ちにもなっていた。



この信号が青に変われば、神藤さんはこちらに歩いてくる。



覚悟を決めて、深呼吸した。

こんなにもたくさんの人がいる中で、自分の視界には神藤さんしか映らなかったことが、多分、すべての答えなのだと思ったから。


しかしそれは、車道の信号が赤になった瞬間だった。