「両方だよ。それでちゃんと謝るから、外で会おうって言ってんだ」

「偉そうに」


でも確かに、電話で話して終われる内容ではないとはいえ、家で話せば嫌な空気になることは、今のこの状況がじゅうぶん証明していた。

言い訳されて、謝られて、それで何事もなかったみたいにできるわけはないだろうが、それでも会って話さなければずっとこのままなのも、わかっている。


もういっそ、話の流れで告白して、すぱっとフラれるのもありなんじゃないかとすら思えてきた。



「わかったよ。神藤さんの言い訳の内容次第だけど」


私の言葉のあと、神藤さんは「じゃあ」と言って、時間と待ち合わせる場所だけを指定して、電話を切った。



誕生日なのに。

だけど、これを区切りにするのもいいのかもしれない。


たとえ、この偽装結婚が当初の予定より早く終わる結果になったとしても、どうとでも誤魔化せるだろうし、何よりその原因を作ったのは神藤さん自身だ。




無用な期待はせず、しかし先ほどみたいな喧嘩腰にもならないようにと自分に言い聞かせ、私は再びバッグを手に家を出た。