気付けば大声を出していて、自分の声と、言葉の内容に、言った私自身が驚いてしまう。

でも、取り繕うような言葉も出てこなくて、私はぐっと唇を噛み締めた。


電話口の向こうで少しの沈黙を作った神藤さんは、ため息混じりに口を開く。



「わかってるよ。あれはさすがに俺が悪かったと思ってる」


それはつまり、やっぱりあのキスは事故ではなくて故意だった、ということか。



「それで? 何で電話してきたの?」

「キレんなよ。誕生日だし、仕事早く片付けたから、飯行こうって誘いたかっただけだよ」

「はぁ? あれからずっと私と目も合わせようとしなかったくせに? なのに、誕生日だからって、何もなかったみたいに、ご飯の誘い? それでうやむやにしようって? ふざけないで」


冷静に話さなきゃいけないとは思っているが、しかし感情が追い付かない。

私はもう、嫌な言い方しかできなかった。



「仕事、忙しいんでしょ。別に誕生日だからってカレシでもない人に無理して時間作ってほしいなんて思ってないし」


刺々しく吐き捨てた私に、神藤さんはまた、大きすぎるため息を吐いた。



「うやむやにさせようとは思ってないからこそ、こうして誘ってんだよ。言い訳くらいさせろよ」

「キスしたことについて? それとも、ずっと私を放置してたことについて?」