夜。


ディナーくらいは豪勢にしたいと思ったが、やっぱりひとりでは外食する気になれず、結局は適当な食材を買って帰宅した。

自分へのプレゼントで、エクレアとチョコケーキも買い足したが、でもスーパーのものなので、きっと味は微妙だろう。



誕生日なのに、どうせ今日もまた、虚しく一日を終えるのだろうなと諦めかけていた時、携帯が鳴った。



もしかしたら、優しい梨乃が仕事終わりに私を誘い出してくれる電話だろうかと思ってディスプレイを確認したら、そこにはまさかの神藤さんの名前があって、驚く。

何度見ても、それは見間違いじゃなくて、この表示がいつぶりなのか、記憶を辿っても思い出せない。


まだ何を話せばいいかもわからないままだが、しかし無視することもできなかった。



「もしもし」


唾を飲み込み、通話ボタンを押す私。



「何してんだ?」

「え? あ、えっと、これから晩ご飯の準備しようかなって思ってたところで」

「お前、誕生日なのに祝ってくれるやつもいないのかよ。ほんとに友達少ないよな」


私がこの一週間、神藤さんの所為でどれだけ悩まされたか。

なのに、当の本人は久しぶりの会話でもこの調子だ。


何だか急に、色んなことがバカらしくなってきた。



「うっさいなぁ。嫌味が言いたいだけなら切るよ」

「待て、待て。冗談だろ。マジになるなよ」


軽く返された途端、ぷつん、と何かが切れる音がした。



「神藤さんの言動の何が冗談なのか、私もうわかんない!」