「美嘉にはお前という友達ができた。だからもう、心配なんかない」

「私は、今日、仲よくなったばかりだよ? 何もできないよ」

「たとえ遠く離れてたって、一緒に笑い合える相手が世界のどこかにちゃんといるってのは、案外、心強いもんなんだ。それでじゅうぶんだと思うけどな」


そんなものなのだろうか。

神藤さんは、息を吐いた。



「でも、ありがとう」

「え?」

「お前がいてくれて本当によかった。今回のこともそうだけど、兄のことも、誰かに自分の口から打ち明けたのは初めてだった。その相手がお前でよかったと、本気で思ってる」


素直な神藤さんは、ちょっと気持ち悪い。

おかげで、どういう反応を返せばいいのかわからなくなる。


困惑する私を、神藤さんは笑う。



「美嘉は、笑って旅立つんだ。俺も今、こうして笑ってる。どっちもお前がいたからだ。不思議なもんだよな」


傷は、確かに痕になって残ってしまう。

だけど、どんなにいびつでも、元のように綺麗にはならなくとも、皮膚はちゃんと再生するのだ。


人の気持ちも、きっと同じ。



「美嘉さん、向こうで幸せになれるといいね」

「そうだな」


幸せに。

私には縁遠いものだけど、せめて私のまわりにいる人には、それをきちんと感じていてほしいなと思う。