美嘉さんは、グラスの淵を指でなぞった。
「柾斗は、そんな私の気持ちに気付いて、私との結婚話を破談にするために、誰でもいいからって先手を打って結婚したのかと思ってた」
「………」
「でも、全然違ったみたい。柾斗は杏奈さんのこと、本当に大切にしてるみたいだから」
確かに、嫌われているわけじゃないことはわかっている。
けど、神藤さんは、何だかんだ言いながらも、いつも常に相手のことを思い遣っている人だから、自惚れるわけにはいかない。
「さっき、電話してた時、柾斗が言ってたの。『あいつはじゃじゃ馬みたいなやつだ』って。『いつも突拍子もない言動で、俺は振りまわされてばかりだよ』って」
「悪口じゃないですか、それ」
「でも、柾斗、笑ってたわよ。私、柾斗があんなに楽しそうに誰かのことを話すの、初めて聞いたもの」
「えっ」
「昔の柾斗からじゃ、想像もできないわよ。ちょっと会わないうちに、よく喋って、よく笑うようになってた。それってあなたと結婚したからじゃない?」
昔の神藤さん。
そういえば、一度もそういう話は聞いたことがなかった気がする。
「見たい?」
美嘉さんは、悪さをする子供みたいな顔だった。
好奇心に負けて思わずうなづくと、「確かデータがあったはず」と言い、美嘉さんは携帯を操作する。
「あー、これだ。大学の時のやつ」
「柾斗は、そんな私の気持ちに気付いて、私との結婚話を破談にするために、誰でもいいからって先手を打って結婚したのかと思ってた」
「………」
「でも、全然違ったみたい。柾斗は杏奈さんのこと、本当に大切にしてるみたいだから」
確かに、嫌われているわけじゃないことはわかっている。
けど、神藤さんは、何だかんだ言いながらも、いつも常に相手のことを思い遣っている人だから、自惚れるわけにはいかない。
「さっき、電話してた時、柾斗が言ってたの。『あいつはじゃじゃ馬みたいなやつだ』って。『いつも突拍子もない言動で、俺は振りまわされてばかりだよ』って」
「悪口じゃないですか、それ」
「でも、柾斗、笑ってたわよ。私、柾斗があんなに楽しそうに誰かのことを話すの、初めて聞いたもの」
「えっ」
「昔の柾斗からじゃ、想像もできないわよ。ちょっと会わないうちに、よく喋って、よく笑うようになってた。それってあなたと結婚したからじゃない?」
昔の神藤さん。
そういえば、一度もそういう話は聞いたことがなかった気がする。
「見たい?」
美嘉さんは、悪さをする子供みたいな顔だった。
好奇心に負けて思わずうなづくと、「確かデータがあったはず」と言い、美嘉さんは携帯を操作する。
「あー、これだ。大学の時のやつ」


