「釣りはな・・・ただ待っているだけで良いというものではないのだ・・・。」


 我が師の言葉・・・。


「は?」


 そう、たずねられるのも無理はない。


「いや、なんでもない。それで、那須の国への使者は?」


 国を落とせば、次にはその国をどのように支配するのか・・・そんな仕事が待っている。


 新しい首領の配置、支配の方法、兵力の分散。


 そして・・・民をどのように、この国に従わせるか・・・。


 考えることは山のようにある。


「はっ・・・アカツチを向かわせようと・・・。」


 アカツチね・・・確かに恰幅がよく、程よく年取った男の方が、民も安心はするか・・・。


 髭もなんだか、自分より王様っぽいし・・・。


「良いだろう・・・那須の国は銀が取れる山があるな・・・職にあぶれている人間たちを、そこに向かわせろ。年貢は・・・そうだな・・・まぁ、那須の国のときと同じで良いだろう?あと、神社を建てておけ。とりあえず、これで・・・あとの細かい問題はまた、出たときに考えるとしよう・・・。」


 神社を建てるという行為は、お前の神は俺の神に負けたという証拠となる。


 自分たちと同じ神をあがめさせることで、お前たちは俺たちと同じ国の民となったことを示すのだ。


 ・・・釣り人にはいらぬ知識だ。


 こんなことより、イワナを釣ることの方が、どれだけ難しいか・・・。