「そんな馬鹿な?」


 自ら『天照大神』・・・と、太陽の神と名乗るほどの傲慢さを持った女だぞ。あいつは・・・。


「このワノスケ、自らの命に代えて嘘は申し上げません。そして、天照王妃には残念ないことに子が降りません。」


 そりゃ・・・あんな傲慢な女に付き合える男など、この世界にいるものか・・・。


 いや、違う。


 子がいない?


 ・・・・つまり・・・・・跡取りがいない・・・・・・・?


「スサノオウ・・・どうか、コレをお受け取りください。」


 言うと、ワノスケが取り出したのは、瑠璃やらエメラルドやら、わけの分からない豪華絢爛に装飾された鞘に収められている刀・・・。


 ・・・・・・・・・・草薙の剣・・・・・・・。


 コレを、受け取るというコトは・・・・・。


「・・・俺に王になれと・・・?」


 馬鹿な話を?


 俺は王家から捨てられた身。


 いまやタダの一介の釣り人。


 時々村に下りて、オロチと共に酒を飲み、笑い、馬鹿騒ぎをするだけしか脳のない、ただの世捨て人に過ぎない。


「アナタ様以外におりませぬ。須賀の国はいまや倭の大陸一の大国。数万の民が暮らす一大居住区。王が不在となれば、出雲をはじめとして、多くの国に狙われるのは、当然必須。どうか、民のために、姉さまのために、そして、無くなられたご両親のために・・・。」


 ワノスケは、再度深々と頭を下げる。


「・・・そんなことをいきなり・・・。」


 俺が王になってどうしろと言うのだ?


「どうしてもと言うのであれば、今日は近くの村で一晩過ごさせていただきます。それまでにご決断くださいませ。」


 それは、半分以上脅迫に近い懇願。


 一晩だけの猶予を与える。


 だけど、明日になればあなたは王になってもらう。


 ・・・・冗談ではない。


 思ったが、それでもこいつらがここから去ってくれるなら、今はそれでよかった。