「一緒にエレベーターに乗るのも最後だな」
龍仁の言葉に誰もいないエレベーターのなか、佳子は涙を流した。

「お疲れ様」
佳子の頭を龍仁が撫でる。

本当は熱血漢で、誰よりも情が厚い。泣き虫。でも周りのことを考えると素直に涙を流すことができないくらい気遣い屋の佳子。

そんな佳子が最後の日も精一杯涙をこらえ明るく去ろうとしていることを龍仁は
分かっていた。

自分の前ではもう泣いていいのだと佳子に想いが伝わると、佳子はこらえていたものを我慢できなかった。