夢芽は、恥ずかしさから顔を赤くし、心の中で「やっちゃった〜」と呟く。恥ずかしくて顔は上げられない。

夢芽は、「ドジ」とよく言われる。あまり普段は気にしていないのだが、このカフェでは醜態を見せたくない。なぜならーーー。

「Bonjour,bienveue.(いらっしゃいませ)Y aーtーil des blessures?(お怪我はありませんか?)」

優しい声に夢芽が顔を上げると、きれいな金髪に空のような青い目をした映画に登場しそうな優男がいた。

「Tout va bien.(大丈夫です)」

そっと男性が差し出した手を、夢芽はそっと握らせてもらい立ち上がる。まるで異国の王子に手を取られているような気持ちに夢芽はなった。

男性と手を握っている間、女性客からの視線は怖かったが、夢芽は幸せを感じる。

「Merci beaucoup(ありがとうございます)」

顔を赤くしながら夢芽は言った。男性は優しく微笑みながら、「気をつけてくださいね」と言う。夢芽は「Oui(はい)」と言い、空いているカウンター席に向かった。